いま広範に日本農業が消滅して来ています。先の戦争で国民が殺され、国土が破壊され、食糧危機に陥った時、農業が国民を救いました。私の父親は42歳で肺結核病死し、母子4人で父の実家の農業をして危機を乗り越える事が出来ました。食糧確保ー農業生産・加工調理は生活の基本であり、子どもたちが労働体験を積んで成長する場でもあります。農業消滅は、家族で食糧を生産・消費する場を失うことで、農業という職業が無くなるだけではありません。自然を利用し人類が発展してきた過程を追体験しながら、更に高度な利用へ、持続可能な開発へと前進する、と云う人類的課題に暗い影を落とします。
日本では、豊かな降水量を基に灌漑農業が発達して来ました。日本の急峻な地形に降水すれば、急流が発生し、強力な浸食作用で渓谷が形成され、下流に大量の土砂を運びます。急に流速が落ちる所で土砂を堆積し、扇状地や天井川が形成されます。その肥沃な土地で作物を育てるため、水路網を建設し、堤防・樋門を配し、用排水体系をつくり、水稲栽培を主に食糧を確保して来ました。集中豪雨で降水量が一気に増大し、水路網、堤防・樋門で防ぎきれないで溢水・冠水となっても、1,2日間程度なら耐えられる作物(水稲)を栽培するなど、利水と共に浸水を見越した灌漑農業を構築していました。
上流域の灌漑農業衰退で水田のダム機能が消失すれば、下流河川への流出量が一気に増大します。そもそも河川の大ダムでは、貯水時に河川流量が極端に少なく抑えられ、放水時には大流量が支川に逆流を起こさせなど、河川の状態が歪められています。もしも放水時に、大流量が土石流化すれば人命を危険に晒します。河川の大ダムは、電力、都市用水などの利水施設であっても、濁流が住民を襲う、と云う最悪の状態を生む危険があります。流域全体で、降水量・河川流量などを観測し、対策を採る流域治水を、行政が本気でつくり上げて行く必要があります。
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