ナチスの犯罪を裁く概念として唱えられた「人道に対する罪」は、2001年人種差別撤廃のための国連ダーバン会議で「奴隷貿易・奴隷制」を「人道に対する罪」としながらも、かつて植民地支配を行った国々の反対があり「植民地主義はいつの時代でも許されない」に止められました。東西冷戦の間は、植民地問題が国連の議題に出ることはなく、ダーバン会議が初めてです。
ダーバン会議では、パレスチナ問題(パレスチナ民衆への攻撃)を採り上げたことで、アメリカとイスラエルが途中ボイコット。その直後9.11事件が発生し、アメリカなどの「対テロ戦争」が始められ、ダーバン会議の「人道に対する罪」提唱は国際的に大きく後退しました。
旧植民地宗主国としてのオランダ、イギリス、ドイツ、フランスなどに対して、植民地支配下での大量虐殺など暴力に対する償いを求める各種裁判が起こされました。しかし、その結果は「被害者本人の死亡・棄却」もありますが、償いが認められた例もあります。日本軍侵略と植民地での徴用工・慰安婦問題もこの中にあり、今や植民地主義は、人類全体の問題として、それを克服し、忘れてはいけない、との理解が拡がっているのではないでしょうか。
昨年7月国連グテーレス事務局長の「ネルソンマンデラデイ」講演で「不平等のパンデミックへの取組」と題して、地球規模での不平等、不公正の歴史的要因が、植民地主義と家父長制にある、として、植民地主義とジェンダー関係が世界の中心問題と訴えました。
治安維持法犠牲者たちが闘ったのは、侵略戦争・植民地主義反対と共に、両性の平等(ジェンダー平等)に基づく個人の尊厳確立のためでした。20世紀の世界大戦を経て植民地解放・独立国が拡がり、一部大国による専横と不平等・不公正の国際政治を正す新しい加盟諸国が集まり「核兵器禁止条約」発効へと大きく歴史を前に進めました。治安維持法犠牲者の志が形を現して来ている、と感じるのは私だけでしょうか。
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