熱海市の土石流災害、広島県、島根県などの水害は、線状降水帯等の集中豪雨によるものでした。水は河川の中だけを流れるのではない、地表のあらゆるところで流れ、逆に、河川を造って行くことが良く分かります。熱海では山上の過剰な残土置き場が発生源と云われ、広島県などの水害では、河川が溢れるだけでなく、道路も流路の一部となり、住宅地も浸水し、河川の流域になったような状況を呈しています。つまり、集中豪雨は、地表全てを水が支配し、河川を通じて運ばれる濁流が堤防を攻撃、越水・破壊して洪水を起こし、下流部で広範囲に浸水域を拡げ、それによって水の氾濫が収まるのです。
菅首相は、熱海の災害現場を視察して「線状降水帯を予測する器材を開発云々」と言いました。都市開発における残土置き場規制こそ直ちに取り組むことではないのでしょうか。降雨だけで水害が起きるのではありません。地表における水の挙動ふまえた災害予防こそが求められると思います。
降雨と水流が地形(平野と耕作地、田圃と貯水池)の原型をつくり、そこに用排水路建設、河道と水量の管理(井堰・樋門等)などの灌漑農業を発達させ、人類の生活領域を拡大して来ました。産業革命・資本主義生産がつくり出した社会は、河川と深く関わる灌漑農業に替わり、地下資源・希少資源を使った高機能機器やIT・AIが造り出す情報化社会を現出させましたが、自然との関係では対立・対抗関係が強まり、災害が多発・激甚化して来ました。
防災では、自然を抑え込む事が出来ると勝手に断定し、例えば水防では「連続高堤防」「巨大ダム」で、水は河川内から外に出さずに海に排水できる、として来ました。しかし、それこそが不可能で、「ダムの緊急放流」による下流域水害、集中豪雨による堤防超増水が頻発しています。これ以上「連続高堤防・巨大ダム方式」を続けるのでなく、自然との対立・対抗関係を緩和する政策が求められます。
水圏(雨雪等降水、河川・池等地表水、動植物・土壌中の水、伏流水・地下水)の大循環の中で、地表の改変及び植生の変化が起こり、水の挙動に大きく影響を与えます。地球温暖化は、その変化・変動を拡大しながら、新たな平衡値(人間や生物に危険な値)に進もうとしています。水害から、水圏の変動を読み取り、自然との対立・対抗緩和に向けた政策を造り出すことが一番求められるのではないでしょうか。
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