面積で岡山県の西3分の1を占める、北は新見市から西は笠岡市までの市町村との「連携協約」を結ぶことを条件に、倉敷市が「地方中枢拠点都市」に指定され、「選択と集中」で、新たな普通地方交付税及び特別交付税措置が受けられる――このアベノミクス「地方創生」に前のめりとなって動いていた伊東香織倉敷市長は、安倍首相を本部長とする「まち・ひと・しごと創生本部」の下に設置される「地方創生有識者会議」の12人のメンバーの一人に選ばれました。
「有識者会議」主要メンバーの増田寛也元総務相は、中公新書『地方消滅』――このセンセーショナルな見出しの本で「半数近くの自治体で若年女性が半減」し「自治体の消滅可能性」を叫んでいます。しかし、根拠のない一方的な推計に反論が出され、事実と異なり「風評被害だ」との声が地方から上がっています。
「地方中枢拠点都市」は、「消滅自治体」をカバーするとともに、東京一極集中を是正するものとされ、さらに国の形を、道府県廃止・道州制へ変えていく第1歩とされています。倉敷市がそうした道に進んでよいのかどうか、十分な検討が必要です。
平成大合併時には、交付金増額がありましたが、合併した旧町村部の多くは人口減少が加速しました。今回「地方創生」は、人口減の更なる加速を招き、本当に「消滅」させる政策ではないか、と疑ってみる必要があると思います。
「地方中枢拠点都市」「日本型コンパクトシティ」構想は、「選択と集中」と称して、「人口減」の周辺市町村への投資は「効果が少ない」として、農村集落は「撤退させる」と言っています。その一方で、「一点集中型」「トリクルダウン的発想」が特徴で、「地方中枢拠点都市」に指定した都市に、圏域経済の牽引役としての交付税措置を集中します。これまで国が地方政策で唱えてきた「均衡ある国土の発展」「格差是正」といった言葉は影を消しています。
今必要な地方政策は、「合併」を見直して自治体の「分離・分割」を行うことや地域自治区を設置することなどにより、住民の自治意識復活こそが求められています。そこにこそ「人口流出のダム効果」が働くのではないでしょうか。
また、これまで市町村を、広域連携及び県政が、自治権を尊重しながら補完する、重層的地方自治制度が行われてきました。福祉・教育などの行政サービス、防災行政がそうして充実されてきました。ところがこれを、「二重行政」などと攻撃し、道府県を廃止し「道州制」にしようとしています。国の形を、国民主権・住民主権から、国民統治、住民統治の形に変え、国政を外交軍事に特化しようとするものです。
結局、アベノミクス「地方創生」の実像は、「企業が活躍しやすい国」「戦争する国づくり」を目指し、「道州制」へ導くことではないでしょうか。
いま、「消滅自治体」と名指しされた各町各村の中から、人口減に歯止めを掛け「小さくても輝く自治体」として頑張るところが現れています。そこでは、「農山漁村発の、自然と共生した持続可能な生き方と働き方」が実践され、地産地消の農家レストラン、農業体験用貸し農園など、「生活の中から仕事を生み出し、仕事の中から生活を充実させる」取り組みが広がっています。
農業への株式会社参入、農協解体、農業委員会の市長任命制など「アベノミクス農政改革」に対決し、家族農業を守り「安全な食料は日本の大地から」の取組みが進められています。これはアベノミクス「地方創生」への大きな反撃となるでしょう。
最近のコメント