現在は、統一戦線の時代と言われることがあります。民進党にとっても、共産党にとっても、「この道しかない」と、野党共闘・統一戦線を力説しているのが、渡辺治一橋大学名誉教授による参院選結果分析です。(雑誌『治安維持法と現代』2016年秋季号インタビュー)
民進党は、野党共闘が無ければ、1人区での民進党候補者当選は無く、32人が24人になっていた、と断じています。、比例でも、民主党、維新の党合計得票の前回比で、34.05%から20.98%へと下がり、複数区での民主党増票は、共闘効果(野党共闘を評価する無党派層の票増加)とキッチリ指摘します。
共産党についても、2010年総選挙が底で、3回連続で比例得票率を上げてきたが、今回比例で、2014年総選挙比0.5ポイント減らしたことを捉えて、「共同の主軸候補が民進党以外であった選挙区で比例票を増やしている」「選挙区で野党統一候補に入れた多くの人は、比例でも民進党に入れる。選挙区は統一候補に入れて比例は共産党に入れるかと言うと、そうはいかない。沖縄も岩手も民進党で無く、香川は共産党の候補。埼玉、神奈川、福岡は複数区で選挙区は負けているが競い合い、比例で前進している」と指摘し「共産党は比例得票率を減らしたが、国民の信頼を得ている」と分析しています。そして、共産党の目指す政治目標を実現するには、もうこの道しかない」と言います。
野党共闘・統一戦線の道しかない、これは共産党綱領路線です。60年安保闘争と言われた国民運動では、共闘した社会党・総評への選挙管理内閣の共同政権構想を共産党が提起しましたが実現せず、自発的な市民運動は大きくありませんでした。今回戦争法反対・廃止闘争は、4野党と市民連合がスクラムを組んで闘い、共産党が「国民連合政府」を提唱したことがきっかけとなり、野党の選挙協力が実現し、大きな成果を挙げました。「衆院選で野党共闘を」は合言葉となっています。
統一戦線とは何か。1970年代全国を席巻した「革新自治体づくり」では、社会党、労働組合、共産党が協定を結び、住民参加の統一戦線ではなかったでしょうか。民主的首長、住民本位の首長を選び出すため、保守系人士を含む幅広の首長選挙を闘って来ました。こうした統一戦線運動は、労働組合、民主団体などが担ってきました。しかし、最近は、住民と労働組合の間が分断され、民主団体も構成員に依拠した運動よりも経営主義が強調され、政治に関わる力が急速に弱められて来ています。
統一戦線の時代と言われる現在は、暮らしと平和が脅かされる時代となっています。消費税10%への増税は、今でも生活が苦しいのに、もしそれをすれば、暮らしが良くなる希望が失われ、国民は自公政権を恨み倒すしかなくなるのです。また、戦争法発効に続き、3分の2超改憲勢力による憲法九条廃止が、子どもたちの将来に暗雲をもたらしています。子どもたちの未来に平和を、と願えば、国民は、改憲に身体を張って反対しなければなりません。
厳しい政治対決こそが、統一戦線を求めています。体制側も一致協力しようとしています。財界・大企業と自民・公明・おおさか維新等連合です。TPP国会審議で、2度にわたる暴言を吐いた山本農水大臣の辞任要求を数の力で封じ込め異常事態の中で強行採決しました。これに対して、民進、共産、社民、生活等野党連合は、民進党の妥協的態度を乗越え、結束して徹底審議を要求して闘っています。
また、統一戦線は幅広になればなるほど、内部に問題を抱えるのは、体制側も同じです。改憲でも、民主党はゆるいカタチで「改憲派」でしたが、今や「安倍改憲は許さない」と言い出しました。憲法審査会に民進党を引き込み、「政治の技術」で自民党改憲草案にうたう九条廃止を狙っています。まさに、平和を守り改憲を許さない統一戦線が求められています。さらに、消費税10%への値上げ反対では、民主党政権時代に決めた値上げを、国民の声に押されて、「生活を守る」「増税反対」へと転換せざるを得なくなっています。
こうして、平和と暮らしの二大テーマでの、統一戦線同士の闘いとなっていくのではないでしょうか。平和と暮らしを守る統一戦線を大きく、強くするために、労働組合、民主団体の力の復活を心から願い、新たな住民運動を起こし、それらの統一を推進して行きましょう。
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