2018年西日本豪雨災害は、倉敷市でも、真備町だけでなく、広範な水害問題を惹起しています。粒江、粒浦、吉岡、堀南など下流域の浸水・冠水域が拡大し、かつ直ぐには退きませんでした。特に倉敷川が、妹尾川、笹ヶ瀬川に比べ最も退きが遅い、と指摘されています。コンビナート誘致の都市化政策(市街化区域の増大)で、農地(水田)面積が著しく減少しているからではないでしょうか。
大正年間の高梁川大改修で、東高梁川を廃川にした倉敷地区は、洪水は消滅しましたが、用排水路の上流と下流の矛盾は激しくなっています。倉敷駅を中心とした旧市街地は、用排水路を無くし、雨水も下水管に取り込む「合流式」で内水氾濫を防ごうとしていますが、逆に、大雨時には、側溝から汚水が溢れるなど、地下埋設管の容量不足が問題となっています。酒津の高梁川の水を取り入れる貯水池から各方面への用水路は、市街化区域に水を溜めること無く一気に下流の市街化調整区域へと流します。都市化が進むだけ、下流域の水害が酷くなっています。
こうした、上流域と下流域の排水を巡る対立が激化している点は、高梁川の上流域(広島県にも及ぶ)と下流域にも見られます。今回、真備町の大水害は、最下流域での、大(高梁川)、中(小田川)、小(末政川、高馬川、真谷川など)の河川合流点での逆流・滞留増水及び越流破堤がもたらした災害です。
小田川の高梁川への接続点は、まるで広島県東部・岡山県西部の増水受け口です。小田川への末政川、高馬川など支川の合流口は、小田川(広島県東部含む岡山県西部一帯)の増水受け口。その全体の増水した泥水が堤防の決壊・越流を引き起こし、末政川堤防、高馬川堤防が真備地区を3分割して泥水が滞留した上、7つの排水機場は水没し、故障していて排水できず、被害が拡大しました。浸水2日目午後からポンプ車を10数台動員してやっと排水が始まりましたが、5日間滞留した所もあります。謂わば、上流域と下流域の矛盾の集中点に真備町が置かれたーー以前から地形的な問題として指摘されていたにも拘わらず放置されたーーここに重大な反省点があるのではないでしょうか。
その矛盾は、単に高梁川・小田川合流点付替えだけで解決する問題ではありません。大正年間の高梁川大改修、それに先行する総社市の湛井堰改修、高梁川堤防強化の水利事業まで遡る大問題です。急流と風化で形成された氾濫原・扇状地、斜面の段々畑、溜池と棚田、広大な干拓田と水路網など、農業社会がつくり出した国土そのものが、危機に瀕している、と捉えるべきではないでしょうか。
農業社会が崩壊の一途を辿っていて、食糧は大丈夫なのか、また、地球温暖化で異常気象が増大する中、水害は本当に防止できるのか、問題意識が高まっています。農業する土地への、固定資産税を軽減し、農業振興のため価格保障・所得保障を行って、安全・安心な国土保全への政策的転換が求められているのではないでしょうか。
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