国土交通省は7月6日、洪水・巨大地震に備える防災・減災総合対策を公表し、全国109の1級水系で流域治水プロジェクト策定する、と発表しました。それに先立つ5月26日に、社会資本整備審議会総委員会が「流域全体で水害を軽減させる」抜本的対策への転換を求め、答申をまとめる、と公表しました。倉敷市にも6月10日付で、水管理・国土保全局河川計画課長等から「流域治水プロジェクトの推進について」の通知があり、中国地方整備局においても協議会を立ち上げ、プロジェクトを推進する。倉敷市としても取り組みを検討する、と5月15日対市交渉の回答に記しています。
「流域治水」「総合治水」とは何か。国土交通省は、堤防やダムだけに頼らず、貯水池の整備や土地利用規制、避難体制強化、鉄道橋脚補強、地下街の浸水対策、道路高架部の一時避難場所、ビルの地下貯水施設整備、ため池や田圃の貯水機能活用、ダムの事前放流など87施策項目を提示しました。近年の相次ぐ水害に、国土交通省が慌てて対策を列挙した印象は免れません。
実は1970年代、ダム「緊急放流」災害訴訟が急増し、1972年10月建設大臣が「総合治水対策」を諮問し、1973年「防災調整域事業」「都市河川治水緑地事業」1977年「多目的遊水地事業」が計画され、1980年5月「総合治水対策の推進について」の建設事務次官通達により、大都市圏の中小河川を中心に14河川が指定され、事業が行われました。
この「総合治水対策」について、先年亡くなられた岡大名誉教授森瀧健一郎氏が、著書「河川水利秩序と水資源開発」で「それが従来型の治水への『反省』に立って登場したものであることは否定できないにせよ、その理念が国の治水政策全体の基調ととされるようになったのではない」として「治水の基本がダムと高水(高堤防、捷水路)方式であることは変わっていない」と厳しく指摘しています。
森瀧氏が批判する、ダムと高水(高堤防、捷水路)方式とは、明治以来の日本の治水が、地主階級の要求で連続堤防で農地等への浸水を無くし、河川の湾曲を減らし、すばやく海へと流れる河川に造り変えたこと、その後、敗戦直後大水害頻発の中、アメリカ占領軍情報「テネシー川総合開発」を真似た多目的ダム乱発は、高水方式の歪みを拡大し、治水の歪曲をもたらした、と厳しく指摘しています。
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