倉敷地域では、大雨が降ると倉敷川排水路への流入が急速に増大し、中小の排水路網が満杯となり、田圃の冠水、道路への越水が常態化しています。これに対して、倉敷市は「雨水流出解析手法を用いた浸水対策」を進めています。
雨や地形データ、水路や排水機場の能力・運転情報をもとに、コンピューター上で雨を降らせ、その水が用排水路・下水管から、河川を経て海域に至るまで、どこで溢れ浸水するのか、を再現し、対策の効果予測をする、としています。
平成23年台風12号の雨を再現し、4,567ha(倉敷地区1,825ha)について、短期(越流防止工事、水路改修、浚渫等)及び中長期(水門樋門拡幅、バイパス菅・貯留施設、ポンプ場新増設)対策による効果予測を行い、短期対策でも浸水戸数は2/3に、溢水量は1/4以下に軽減される、と極めて楽観的な見方をしています。
一方児島湖では、水質悪化が問題視されるとともに、締切り堤防の功罪が議論されていると聞いています。児島平野の大規模干拓のために造った締切り堤防でせき止められた水が、倉敷川を逆流し、倉敷平野において、田圃の冠水、道路への越水の常態化をもたらしている、と言われています。
この問題を、一刀両断に解決する方法はありません。干拓事業が何を目的にどう計画されたか、諸矛盾にどう対策をとるか、などについてくわしい議論、検討が必要です。しかし、その議論をするための資料が私の手元にはありません。
そこで、児島湖に達するまでの、倉敷川排水路網の機能低下に絞って、対策を考えてみましょう。元々倉敷平野などの用排水路は地下水とつながっていました。水路の三面コンクリート化にともなって、用排水水路網が地下水路網と分離され、吉岡川など最下流地域で地下水路と一体化しています。この間の地域に降る雨水が、三面コンクリートの水路を通って、すぐに最下流地域に達し、逆流が起き、田圃の冠水、道路への越水が起きるのです。
完全三面コンクリート化でなく、底面又は側面の穴あき構造を何箇所か設置し、地下水と用排水路の連携復活を検討してはどうでしょうか。昔渇水時に、地下水の湧水箇所に池を造り、用水不足を補ったことがありますが、今度は、地下水と一緒になった地下貯留システム再構築の研究です。
実は、高齢者の転落死亡・障害事故が、完全三面コンクリート水路で発生し、社会問題化しています。道路幅を軽四自動車が通るよう確保し、排水機能強化のための完全三面コンクリート化が、住宅化した農村を中心に広がっています。高齢者が転落し、コンクリート壁での打撲などで怪我をし、死亡に至る例が出ているのです。
昔の水路には川岸に草が生えていて、水が無いときに転落しても、大きな障害事故にはなりませんでした。こうした昔の水路に近い状態を今復活するのです。コンクリートにしても、底面に土を残せば障害は軽減されるのではないでしょうか。
これまで社会は、農村の都市化へと進んできましたが、その一方方向の是正が問題になっていると思います。「宅地化すべきもの」として、市街化農地に過酷な税金を課して追い出しを図ってきたことが反省され、2015年4月都市農業振興基本法が国会の全会一致議員立法で成立し、都市農業・農地は「あるべきもの」と位置づけを変えられようとしています。
一方的な、農村の都市化は見直されなければなりません。台所から近い所で食材を得る、緑の農地は周辺散策コースになる、大雨時の遊水地(農作物被害は出るが)として住宅浸水を防ぐ、災害空地として利用する、など農業、農地の多面的な機能が評価されています。農村から都市への変貌の中、農村再生が求められているのではないでしょうか。、
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