水害は、地震・火山、森林等火災などの災害とは異なります。人類が水圏(雨と水ーー陸水と海水)の利用を拡大する中で文明を発達させ、文明の発達が水圏の利用と矛盾を起こし、その対立激化で、水圏利用が変化し、また、文明発展も変わって来たのではないでしょうか。
降水が地面に溜まったり、より低い所へと流れたりして出来る、溜池や河川は、人間社会が利用エリア拡大・維持するために造ったものです。堤防で、水の存在エリアを仕切って「外水」とし、その堤防で、池や河川の水が排除されたエリアの水を「内水」としています。堤防決壊・越流により「内水」となった「外水」が大被害を及ぼします。
堤防が無く、内水、外水の区別が無ければ、降雨が止めば溜池や河川が消滅し「幻川」となります。「幻川」は堆積物により周囲より高所となり、新しい川はより低い別の所を流れ、氾濫原が広がって行きます。これを堤防で仕切り河川流路を造ることで、人間が利用する氾濫原となり、耕作地・居住のエリアが生まれるのです。
また、海洋でも、河川が運ぶ土砂による陸地拡大、干満・潮流による陸地形成、そして、干拓事業で、海水を排除する堤防を構築し、淡水湖の造成、水路網設置で、塩水を沈下させて耕作地、居住地を拡大してきました。
河川造成・改修と干拓は、人間社会に大きな恩恵をもたらすとともに、河川の氾濫、干拓地の内水氾濫を常態化させました。農業社会は、国、県、市町村の重要行政として、利水・治水事業を行い、農民自身が利水と治水の共同体業務をこなしてきました。利水・治水工事だけで、河川氾濫・内水氾濫を絶滅することはできず、利水・治水の共同体業務をもつ農業の振興が欠かせないのでは二でしょうか。
水害は、地方自治体の消防行政や、国県などの河川管理・洪水対策で完結するようなものでなく、農業社会が変革されるとき、利水・治水事業をどう変革するのか、が問われるのではないでしょうか。自然との直接的関りをもつ第一次産業の衰退が、利水・治水にマイナス影響を及ぼし、危機的状況を生み出しているのではないでしょうか。
「農業と水防を考える会」は、人類史において難局から人々を救った家族農業と農地・食糧確保を元に、開発がもたらす災禍を軽減することを目標にしたい、と考えます。
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