新型コロナ感染者数が、全国で1日1万5千人超、東京都で5000人超の最高増加が止まりません。その中で、九州・中国地方から東北まで、秋霖前線の線状降水帯による水害発生で、日本列島は2重の災害に見舞われています。それぞれ災害の様相は異なりますが、自然との共生(好むと好まざるに拘わらず)の方向でしか解決できないことを前提に効果的な対策が求められます。
コロナ感染では、ウイルス撲滅は不可能であり、好むと好まざるに拘わらず、共生関係で安定するよう犠牲者を出来るだけ減らす対策しかない、と云う科学的知見が共有されなければなりません。公衆衛生では、ワクチン接種及びPCR検査の拡大で、集団免疫の早期獲得、感染連鎖の遮断を社会的取組にし、感染防止策の徹底――「マスク着用」「三密回避」「ステイホーム」「オンライン○○」等々ーーこれは国民が自らと社会を感染から守るために自らを律する社会正義の行動であり、国や会社等から組織的に強制されるものではなく、いわんや病人等社会的弱者へのしわ寄せ・圧迫があってはなりません。
以上のようなコロナ対策が日本できちんと行われて来たでしょうか。政府の対策は「マスク配布」「一律休校」「ゴートゥキャンペーン」の失策と右往左往の繰り返しです。何よりも感染者増を惧れて、PCR検査を抑え、未だに必要な数に達していません。ワクチン接種も高齢者優先までは何とか進みましたが、現役世代への接種で政府と県との見解が食い違い、ワクチン不足も加わり8月になってもほとんど進んでいません。コロナ対策で失政を重ねる政権が、森喜朗IOC元会長の女性蔑視発言、バッハJOC会長の「非常時低宣言下でも開催強行」発言そのままに、執念で強行したのが「オリンピック・パラリンピック」です。開催中に、感染拡大が激しくなり、在宅死が発生し、医療崩壊が拡大進行し「誰が私たちを守ってくれるのか」と国民の政治不信が広がり、内閣支持率は3割を切って下降しています。
水害では「自己責任で逃げよ」としか、国民には伝わっていません。気象庁が、降雨・河川水位情報を発表しますが、どこにどういう方法で逃げるか示されないからです。ハザードマップと云う高低差を基に作った図面を「見て、その外に逃げよ」と云うばかりです。2018年真備町水害では、真備支所も消防署も水没し、町民一人助け出すことができなかったことを、倉敷市はどう総括し、水害から住民を守る施策を検討しているのでしょうか。国土交通省が行う、小田川・高梁川合流点付替え工事ですべて解決すると思っているのでしょうか。堤防とダムで水害を無くす方式に限界があり、流域全体で水害軽減を図る「流域治水」を国土交通省自身が唱え出しているとき、県・市町村がハッキリ発言して行くべきではないでしょうか。特に、治水政策は市町村間で対立することがあり、広域的に問題解決する仕組みを「流域治水プロジェクト」の中でつくり上げることが必要ではないでしょうか。
真備町水害でなぜ大量の水が2~3日間もの長い時間滞留したのか、なぜ高梁川堤防は切れず、小田川と支川堤防が13カ所も越流・破壊されたのか、国土交通省や岡山県は実地調査・検討をしていないのではないでしょうか。また、1967年小田川の真備町分が1級河川に移行され、それまで田畑であった河川敷を国費買収し、河道樹林繁茂の放置が、水害要因になった、と思っている住民は多いが、「バックウォーター」論では、河道樹林化は要因ではないと云い、鋭く対立しています。
堤防・ダム方式による治水政策が1896年(明治29年)河川法制定以降であり、それまでの日本の伝統的治水政策とは、対極になることを考えてみる必要があるのではないでしょうか。堤防・ダム方式の治水は、今や、国土交通省においても「流域治水プロジェクト」として、見直しが行われようとしている、と思えます。水圏の循環が地表を変化させ、そこに田畑を作り、居住し、人間社会を築き、利水と治水の両面を捉えた「灌漑施設・技術」で、水との長い付き合いをして来たことを掴み直し、水圏との共生社会に向け前進することが求められていると考えます。
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