昨年11月1日~12月11日読売新聞連載記事(憲法改悪の旗振り役をしてきた新聞に共産党登場というので驚きました)に加筆されたものです。筆者は「まえがき」で「日本の政治史の現在と将来を考える材料の一つとして、役立てば」と控えめな言い方をしていますが、日本政治の欠陥、特に外交の弱点をズバリ指摘している点は学ばされます。
「問われる日本の外交力ーー体質的弱点に目を」として、第1の弱点は「無条件のアメリカ信仰で、世界を『アメリカの窓』からしか見ない」こと。ベトナム侵略戦争終結を受けて論戦した際、開戦のいきさつについて、田中角栄首相、大平正芳外相も何も知らなかった。アメリカのイラク戦争でも、小泉純一郎首相は真剣な検討・討論も無しに反射的に支持行動をとった。
第2の弱点は、「日本の過去の侵略戦争について反省しないまま、戦後の国際政治に加わった」こと。日中国交回復を成し遂げた田中角栄首相に日本の侵略戦争の反省を質問したら「今は言えない。後世の史家が評価するもの」と答弁。その後、竹下登首相にも同じ質問をしたら「後世の史家に」と同じ答弁。そこで「ヒトラーの戦争はどうか」と質したら「後世の史家」と言ったので、米軍準機関紙が「竹下、ヒトラーの戦争を擁護」と大見出しで報道した。
第3の弱点は「戦時・戦中の軍部主導外交の流れから未だ抜け出せない」こと。対北朝鮮外交でも「圧力をかけて相手側の屈服を待つ」方式で、交渉ルートを放棄するような思慮に欠けた行動をとっている。
尖閣諸島問題でも、田中角栄首相が「尖閣諸島問題についてどう思うか」と周恩来総理に尋ね、周総理は「今回は話したくない」と言った(外務省記録)ので、国交回復がほかの問題でぶち壊しにならないように、引き下がった。それ以来、日本の領土主張を積極的には発信していない。
「大義を見失った対ロ領土交渉ーー千島放棄の原点に問題あり」として、日本外交の弱点を指摘しています。サンフランシスコ講和条約で、アメリカ政府は、スターリンの領土拡張要求を受け入れたヤルタ協定に縛られ、千島列島放棄条項を書き込んだ。講和会議で、吉田茂全権大使は、歯舞・色丹は千島列島に属さないと主張したが、国後・択捉を千島列島の一部と認めてしまった。
アメリカ言いなり外交の弱点が領土問題で現れたのが、日ソ平和条約交渉の際のこと。アメリカのダレス国務長官から「国後・択捉は千島列島に属しない」という新方式が押し付けられた。しかし、これはダレス自身が出席していた講和会議で、放棄した千島列島に属すことが確認されており、何の根拠もない。スターリンの領土拡張を受け入れたアメリカの責任を棚上げし、日本固有の領土を狭めて交渉する、大義も何も無いもの。相手のソ連が認めるはずもない、日本を袋小路に追い込むだけのものだった、と筆者は語っています。
ソ連崩壊後、スターリンが併合した国の大部分が、独立・元の領有国への返還が実現している中、千島列島だけロシアの手中に残されている。日本は、スターリンの領土拡張に抗議の声を一言も上げなかった国として歴史に記録されることになる、と厳しく指摘しています。
尖閣諸島、千島列島など領土問題では、日本共産党が注目されました。いま、国民は政治変革を模索し、試行錯誤していると思います。日本共産党が、注目される段階から脱し、打って出て、国民とともに変革の運動を起こすことが求められていると思います。
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